2006年1月29日(日)

実験ノート2

大学ではとくに、実験ノートやレポートの書き方なんて教えない。教えるにしても一般論というか他人が読んでも判るように書かないといかんのだよの類の指導しかしない。で、書かせてみて駄目だと reject する。

学生の間は、後から見返すというイベントがほとんど発生しないので、何を記入しておくべきだったか、というフィードバックが働かない。で、学生実験なんかだとノートの提出があったりして、「優秀」な学生さんなんかだとホンモノのノートとは別のわざわざ清書したものを提出してたりしていそうだ。

職場で書いたノートはもっとぐちゃぐちゃ書いていた。筆算のメモから装置の置き場所、装置を分解した時のバラす順番と接続位置なんかまで汚い字で殴り書きで書いていて、実験ノートはそういう風に使うものだなんて習っているわけもなかった。
こういうのは、電子ノートじゃ全然サポートしないんだよな

で、シーケンシャルになんでも書くから「ログ」ノートなんだなと納得。一定の意図のもとに、綺麗にフォーマットつきで書くのはきっとアカン。

以下は参考になりそうなものを引用

(from: 東大で学んだ卒論の書き方★論文の書き方)

研究ノートとその使い方
研究ノートの写真


(1) ノートとペンを選ぶ
ノートは、大きさはA4版、ページ数は100ページ(=紙50枚)、紙はフールスキャップ紙がベスト。横罫でよい(方眼罫のものは紙質が劣ることが多い)。
 本当は、米国の大学の本屋で販売しているLaboratory Notebook が最適であるが、日本では入手困難。そんなわけで米国土産の決定版である。
 ペンは、筆圧が軽くてすむもの。直液式ボールペンか、3000円ぐらいの万年筆(安いものや高いものは酷使するに難がある)がよい。色はブルーブラック(印刷の黒と自筆部分の見分けができる)。
 鉛筆書きや修正液の使用は不可(特許紛争の際の証拠とするため)。
(2) 1日の始まりに
研究室に来たら、パソコンの電源を入れる前に、ノートを開き、仕事のリストを書き出して欲しい。なし崩しに取り掛かるのでなく、間を持たせることが重要である。
 仕事の項目は、重要度と期日をはっきりさせること。

11月2日(月) To do:
◎ 併進条件での実験実施 (第1急)
● 回転実験のデータのカルマンフィルタがけ (普急)
△ Pauli 論文の入手 (普急)
◎ SJシンポジウム投稿 (12月1日しめ、木曜にアウトライン打合せ→先生)
◎ 輪講レポ出し(第2急)
△ Mathソフトのバージョンアップ試し (緩)
↑これを書いた後で、メールをチェックする方が精神安定上よい。
「今日一日は、第1急の仕事に取り組めばよい」とわかると、安心できる。

(3) 実験記録簿として
実験の設定条件と観測データを、書き込んだり貼り付ける。
 データの保存を、パソコン上だけで済ますのは安全ではないし、考えたことや、データ価値への見解と、一緒に一覧できないという不便がある。せめて、グラフや代表値(平均と標準偏差)ぐらいは、ノートに貼っておこう。
(4) 脳CPUのワーキング・メモリとして
 書きながら考える。
 文法的に完全な文を書く必要はない。キーワードを、線で結んだり、丸で囲むことで、思考を2次元的に展開する。
(5) ビジネス記録簿として
論文コピー、事務書類、名刺などを貼り付ける。
(6) ブログとして
休憩や食事の際、あるいは一日の終わりに、雑感を書く。これが面白い。

※ (2)〓(6)を、一冊のノートに毎日ドバドバ書いていく。なまじノートを分冊して分類するより役に立つ。 

(from: 化学実験)

実験ノートについて ルーズリーフは使わず、実験ノート( B5 判)を作り、1.Primary Record と2.報告 (report) の両方を書き込む方式をとる。ノートを用いる最大の理由は、記録の散逸を防ぎ、一連の実験の中でデータの順序がわからなくなってしまうなどの事態が起こらないようにするためである。

(Primary Record )

Primary Record とは、実験中の経過、状況などをその場で記録するもので、できるだけ多くの生の情報(そのとき記録しなければ永遠に失われるもの)を書き留める習慣をつけることを目的としている。実験室で行ったことは、その場ですぐにノートに記入するのはもちろんのこと、離れた場所で試薬の重さを測るときはその場所へノートを持っていくべきである。薬包紙・ろ紙・その他の紙片にとっさにデータや計算を書き散らすというような悪癖は絶対につけてはならない。ノートに記入しなければならないことは、試薬の量、操作、反応条件(温度、時間)、観察事項(色、発熱)などである。

文章や形式を整える必要は全くない。そのようなことのために、忙しい実験中に余計な労力を使うことはない。自分だけにわかる略号などを使ってもよいが、あまり略しすぎて二、三日たって読んでみたら自分にも意味が分からなかったというようでは困る。そういう事態を避けるためには、名詞のみの羅列はやめて、短い文章を書くのがよい。複雑な構文は避けるべきである。記号や絵を使うのも良い。観察事項の追加がしやすいように実験経過が追いかけやすいもの(たとえばフローチャート形式)がよい。一連の実験は見開き 2頁以内に書き、頁をめくって次にわたらない方がよい。実験の区切りごとに時刻を記録するのがよい。

実験しなくても書けるようなことや、あとでも書けるようなことは実験中には書かない。感想、解釈、考察などは実験中の状況の記録になる場合もあるので、待ち時間など余裕があって観察の必要もないような場合には書いてもよい。主観的で未熟な記述(きれいな、きたない、など)は報告には不適であるが Primary Record ではかまわない。

可能な限り量的に記述してあいまいさを排除し、操作だけでなく所見も書く。定性分析と言えども定量的な記述は必要である。結果の検討のときなどにそれが生きてくる。逆に、容量分析になると数字だけ書き並べて定性的所見を書かない人がいるが、これも良い Primary Record とは言えない。

あらかじめ記入欄を作って実験しながら記入する方式は、よく予習したという意味では良いが、 Primary Record の本来の趣旨からは外れている。実験では予想外の事態が起こる可能性が常にあり、そういう時にこそ、特に詳細な Primary Record が必要なのである。試料をこぼしたこと、器具の破損なども記録されるはずである。何回かやり直しをしたら、そのすべてについて記録するのは勿論である。(配布された)試料をどのように実験に消費したか、その経過をできるだけ詳細に記録する。最終段階では廃棄(流しまたは回収瓶)の記録があるはずである。一度ノートに記入した事項は、消しゴム等で消してはならず、もし変更、削除などをするときは、その箇所に 2本線を引き、後からでも読めるようにしておく必要がある。間違った情報でも、結果の検討に役立つことがある。あとで間違っていないことがわかった場合には、二本線のそばに「イキ」と書いて日付を入れておく。

[2006.2.8 追加]:
札幌医科大学医学部 分子医学研究部門  実験ノート記載の指針

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